茶道具にはどんなものがある?高額買取のポイントは?

目次

茶道具とは

茶道とは、伝統的な様式にのっとって客人に抹茶をふるまう事で、茶の湯ともいいます。
茶室や茶会をおこなう際に使用する道具を茶道具といいます。

茶道具には、ただ点前で用いるだけでなく、一種の美術品として扱われているものも少なくありません。

以下に主な茶道具をご紹介します。

茶碗についてはこちら→茶の湯に使う茶碗にはどんな種類がある?査定のポイントは?
茶入についてはこちら→茶入の種類は?付属品はあったほうが高くなる?

薄茶器

薄茶器とは薄茶に用いられる茶器のことです。ここでは棗に限定して解説します。

棗は現在は薄茶用の茶器として使われていますが、安土桃山時代頃までは、濃茶器、薄茶器の区別はありませんでした。薄茶器として一般化していったのは江戸時代に入ってからです。

初期のものには転用品が見られ、桃山時代からは茶器としての蒔絵のものが作られるようになります。

その代表的なものが高台寺蒔絵で、町棗、嵯峨棗なども流行します。江戸時代に入ると、光琳蒔絵や春正蒔絵などが流行しました。

茶匠と塗師

羽田五郎は紹鴎の塗師といわれ、茶器だけでなく盆も手掛けています。利休の塗師としては盛阿弥・余三が著名で、手桶水指にも名品があります。遠州・石州の塗師としては道恵・道志があり、宗旦・庸軒は初代の宗哲を育てました。以後、宗哲は代々千家の塗師として今日に至っています。
松平不昧の塗師としては原羊遊斎、中山胡民、小島漆壺斎などが著名です。

棗の形の種類

棗の形は棗系と中次系の2種類に大別できます。

  • 棗系…珠光棗、紹鴎棗、利休棗、尻張棗、胴張棗、平棗、白粉解、長棗、鷲棗、碁笥棗、丸棗、河太郎棗、老松棗、帽子棗など
  • 中次系…中次、面中次、雪吹、面取、寸切、薬器、立鼓、鮟鱇、瓢中次など

棗の塗の種類

真塗、摺り漆、溜塗、青漆、緑漆、堆黒、堆紅、刷毛目塗、蒟醤、存清、彫漆、後藤塗、象谷塗、螺鈿、白檀塗、蝋色塗、津軽塗、春慶塗、輪島塗、掻合せ塗り、拭漆、根来塗、いじ塗り、曙塗、一関張、杢目塗、杢目塗などがあります。

茶杓

茶の湯手前が始まる前は、中国の薬匙や象牙製の匙などが使われていましたが、茶入れを用いるようになると、先の細いものが必要になり、竹茶杓が作られるようになりました。
櫂先の削り方や撓め方、樋の取り方、節の削り方にも幾通りかの約束があります。節から下のことを追取といい、節上の景色とともに、節下の景色も鑑賞されます。

また、茶杓と同じ竹でできた筒が好ましく、竹が違っていても、茶杓と同一作者の作は共筒として珍重されます。後に作られた筒は追筒、共筒があるのにつくられた筒は替筒といい、追筒の場合はなるべく茶杓の作者に近い時代のものが良いとされます。

茶杓の形

茶杓の部位ごとに以下の種類があります。

  • 櫂先…丸形、一文字形、剣先形、兜巾形、平丸形、葉形など
  • 撓め…丸撓め、一重撓め(折り撓め)、二重撓め(二段撓め)
  • 腰形…蟻腰、直腰
  • 切止…一方切、半切、直角切、角止め、六四止め、七三止め、五五止めなど
  • 節…中節、上り節、下り節、節止(元節・止め節)、二節、三節
  • 樋…本樋(順樋)、逆樋
  • 樋の形…一本樋、双樋、数樋、薬研樋、無樋、高樋、両樋

利休の茶杓

千利休は中央部に節がある「中節」を考案しました。
利休の茶杓はこの節に重心を置き、茶入や棗に乗せたときに安定するようになっています。先はややとがっていますが、先端は丸くなっています。撓めは比較的鋭角で、節は蟻腰が多くなっています。

三千家の宗匠の茶杓

各宗匠の茶杓には、以下のようなものがあります。

  • 表千家…4代江岑(逢源斎)、5代良休(随流斎)は利休に近く、6代原叟(覚々斎)は太めで先が丸みをおびています。7代天然(如心斎)は先が剣先のようにとがっています。
  • 裏千家…4代仙叟(臘月庵)がおおらかな櫂先の優品を残す。11代精中(玄々斎)より後は平屋根風の櫂先になっています。
  • 武者小路千家…4代一翁(似休斎)から7代堅叟(直斎)までは利休に近く、その後は太めで端正なものが多くなっています。

水指

水指は、点前に使う水を入れておく器のことです。

室町時代には、水指として唐銅、黄銅、砂張などの金属性のものや青磁などの陶磁器が使われていました。

桃山時代に入るとわび茶が流行し、それにふさわしい瀬戸、備前、信楽、伊賀などの国焼水指が作られました。そのなかには信楽鬼桶、備前種壺などの転用品もありますが、茶人からの注文によって作られたものも見られます。

織部の頃には中国・景徳鎮から古染付の水指が輸入されるようになります。遠州の頃には、日本からの注文で景徳鎮で祥瑞が焼かれました。

南蛮貿易で輸入された器で水指に適したものも数多く転用されています。

江戸時代になると、京焼で水指が作られるようになり、野々村仁清、青木木米、仁阿弥道八、永楽保全などの作品が知られています。

陶磁器の水指

水指の種類には以下のようなものがありますが、特に青磁、古染付、祥瑞、伊賀、志野、備前、唐津の水指が高く評価されています。

  • 中国…青磁、染付、金襴手、祥瑞、安南など
  • 朝鮮…三島、御本など
  • 日本…信楽、伊賀、瀬戸、志野、備前、唐津、高取、薩摩など

古染付の水指

古染付は、中国明朝末期に景徳鎮民窯で焼成された下手(げて)の染付のことです。織部の頃、明朝の衰退に伴ってしだいに民窯が官窯にとってかわり、おおらかで自由奔放な焼物が生まれました。それを茶人が気に入り、見本切形をもって茶道具を注文しました。

一定の形や文様などをもつものを「形物」といい、形物水指として芋頭、雲堂、竹絵、葡萄棚、葡萄絵、手桶、桶側、桜川、詩箋、櫂の絵などがあります。

遠州の頃の祥瑞では、砂金袋、密柑、腰捻、桶形などが知られています。

茶の湯の釜としては、鎌倉時代に始まった芦屋と天命が有名で、優れた作品が残っています。天命は下野佐野で作られ、足利義政の頃に「望月」「残月」「砕銭」などが名物に取り上げられています。芦屋は筑前の芦屋で制作されたもので、各地に系統を引く釜(博多芦屋、播州芦屋、伊勢芦屋、石見芦屋など)ができました。

芦屋と天命は桃山時代に衰退し、かわって京釜が勃興します。
織田信長の注文を受けたという西村道仁、利休が注文した辻与次郎、大西家、名越家などが興り、系流をつないでいます。名越家では初代善正、古浄味、三典浄味、大西家では初代浄林、二代浄清、定林が有名です。

そのほかに、金沢の宮崎寒雉、西村九兵衛、堀山城などが名作を残しています。

釜の形

釜には以下のような形のものがあります。
真形、切合、箆被、尻張、 乙御前、布団、 広口、皆口、 姥口、十王口、繰口、 田口、四方口、 矢筈、一文字、肩衝、撫肩、 面取、笠、達磨、荷葉、兜、 丸、日の丸、角、三角、 四方、升、八角、責紐、常張、塩屋、猿、唐犬、 筒、鶴首、富士、九輪、からげ、 瓢箪、立鼓、重餅、車軸、 平蜘蛛、平、透木、裏?、 茶飯、鍋、手取、香炉、 尾垂など。

芦屋釜と天命釜の違い

芦屋釜と天命釜には、以下のような違いがあります。

  • 天命…金味が粗野、地紋があるものは少ない、黒みを帯びている、甑口が多い、鐶付は遠山、輪、楫など
  • 芦屋…金味が濃密、さまざまな地紋がある、赤みを帯びている、繰口が多い、鐶付は鬼面が多い

蓋置

蓋置は、釜の蓋を置いたり、柄杓を引いたりするときに使う道具で、金属、陶磁器類、木、竹などのものがあります。

最初は金属の転用品を用い、穂屋香炉や五徳が知られています。五徳には足利義政が命銘したといわれる「開山」「隠家」という名物があります。

その後、千利休が竹の蓋置を考案し、茶人の間に広まります。利休が選んだとされる火舎、五徳、三葉、一閑人、栄螺、三人形、蟹は「蓋置七種」と言われ、それぞれ特別な扱いをします。

織部や遠州の時代には、中国の墨台(墨を置くための文房具)を蓋置に見立てて使いました。染付、古銅、青磁などの種類があり、形は三宝、千切、夜学、三つ人形、笹蟹、無閑人などさまざまなものがあります。

宗匠の好みの蓋置

三千家の各宗匠の好みの蓋置には、以下のようなものがあります。

表千家

  • 6代原叟(覚々斎)…赤輪、黒五徳

裏千家

  • 4代仙叟(臘月庵)…三つ葉
  • 10代柏叟(認得斎)…蔦蒔絵
  • 11代精中(玄々斎)…松風、三つ鳥居、三猿、菊絵竹、太鼓胴
  • 13代鉄中(円能斎)…銀三宝

武者小路千家

  • 4代一翁(似休斎)…山の神

建水

建水は茶碗をすすいだお湯や水を捨てる器です。「水こぼし」、または「こぼし」と呼ばれることもあります。

建水は最初は転用品から始まり、利休以後好み物が作られるようになります。

曲物は紹鴎が水屋用としたのを、利休が茶室で使用したのがはじまりといわれています。面桶ともいい、木地のままが正式のものとされていますが、内朱や春慶塗などの塗曲もあります。

大脇差、差替、棒の先、槍の鞘、瓢箪、餌畚、鉄盥を七種建水と呼びます。

宗匠の好みの建水

各宗匠の好みの建水には、以下のようなものがあります。

表千家

  • 3代宗旦(咄々斎)…菊置上
  • 7代天然(如心斎)…平建水
  • 11代瑞翁(碌々斎)…寄せ竹建水、海松桶建水

裏千家

  • 11代精中(玄々斎)…竹の節、酢桶、松葉壺々

茶道具の買取査定のポイントは

保存状態

茶道具の保存状態は、なるべく良い方が高価買取につながります。茶道具は、保管場所や保管方法が素材に適していないと、カビやシミなどが発生しやすく、状態が悪化してしまいがちです。

茶道具には扱いの難しいものもあり、汚れがあるからと安易に洗ったりすると傷むものもあります。欠けやヒビなどがあると、査定評価は下がってしまうので注意が必要です。手入れの方法がわからない場合は、そのままの状態で見てもらいましょう。

作家・時代

名のある作家や古い時代の茶道具は、高額での買取が期待できます。紙や竹など昔ながらの素材でできているものは、時代を経て劣化していることもありますが、汚いからと捨ててしまわないようにしましょう。古いものは意外と高額買取になることも珍しくありません。

付属品

茶道具では、付属品を総称して「次第」と呼びます。本体の袋や包み、内箱や挽家、その包み、外箱または中箱などが含まれ、本体の来歴を示す大切なものです。

千小庵作のある茶杓を例にとると、4つの箱が添い、宗旦、如心斎、了々斎、碌々斎の箱書が書かれています。さらに覚々斎の極めも付いていますが、これらはすべて茶杓の価値を高めています。

共箱や共筒、極書、伝来書、有力な茶人の箱書は評価のポイントになります。箱書は歴代の家元だけでなく、江戸時代の片桐石州、金森宗和、松平不昧、岡田雪台、鴻池道憶、近代の平瀬露香、益田鈍翁、高橋箒庵、大谷尊由、三井小柴庵、三井泰山、松浦心月庵、嘉納鶴庵、小林逸翁などが高く評価されています。

お稽古もの

日々の練習などに使う茶道具はお稽古ものと言われ、それほど高額の買取は期待できませんが、一式の道具としてまとまった数があれば、買取してもらうことは可能です。

以前には茶道をしていたけれど、もうやめてしまった、相続したけれど使わない茶道具があるなどという方は、一度買取査定をしてみてはいかがでしょうか。

茶道具の目利きは大変難しく、買取業者によって査定価格が大きく左右されることがあります。品物に対する知識の乏しい業者の場合、価値あるものを安価で買取する可能性があります。茶道具の買取には、実績のある買取業者やお店を選ぶことが大切です。

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