茶の湯で使う香合の歴史は?どんな種類がある?

目次

香合のはじまり

香合は、香を入れる「合子」(小さな蓋付の器)です。

日本で香をたくようになったのは飛鳥時代のことで、仏教とともに伝わりました。
平安時代になると香はさらに広まり、仏教の行事でなくても、貴族は日常的に香をたきしめていました。

茶の湯と香合

室町時代になると、香は茶の湯に取り入れられ、書院の床の正面に香炉を飾って香をたくようになります。この時代の香合は、座敷の棚飾りとして花瓶や香炉と共に並べられていました。

茶道に取り入れられた当初は、香合はすべて唐物で、堆朱、青貝、存星、独楽などが知られています。

唐物漆器の香合は、茶の湯が始まる前から書院の飾りとして使われていましたが、唐物陶磁器の香合は、茶の湯が始まった頃の輸入品です。

素材は、はじめは金器・銀器・漆器・木彫などでしたが、桃山時代から陶磁器のものが用いられるようになり、信楽、伊賀、備前など各地で茶の湯専用の香合がつくられるようになります。

鎌倉彫や錫縁、根来も香合として使われるようになり、織部・志野・黄瀬戸などの美濃陶では色、形のさまざまな香合があらわれました。

小堀遠州の時代に景徳鎮窯で焼かれた祥瑞には香合もあり、鳥差瓢箪、蜜柑、瓜は高く評価されています。野々村仁清は金森宗和の指導を受け、茶器や香合を多数制作しました。
また、塗りものは江戸時代に各宗匠の好みものがさかんに作られました。

唐物陶磁器香合の種類

唐物陶磁器香合の種類には以下のようなものがあります。

  • 青磁…大半が明末の七官青磁。印合、薬や香料などの入れ物を転用したものと思われる
  • 交趾…桃山・江戸初期に交趾舟貿易で運ばれた陶器のことで,実際には中国南部産と考えられている。三彩香合が有名。
  • 呉須(呉洲、呉州)…景徳鎮以外の地方民窯の総称。
  • 古染付…中国明代末期の天啓年間頃に景徳鎮民窯で日本の注文で作られたもの。
  • 宋胡録…タイのスワンカローク窯のもの。果物の形をしているものが多く、宋胡録柿香合などと呼ばれています。
  • 紅毛…ヨーロッパ産の陶器の総称。紅毛白雁香合はデルフト窯の17世紀頃の製品で、仁清が写しを作った。

和物陶磁器香合の種類

和物の場合、桃山時代のものは個性がみなぎり、江戸時代のものは茶匠好みのものに斬新なものがあります。

京焼系では古来の写しが多く、野々村仁清、尾形乾山は名品を残しています。

有名な香合には以下のようなものがあります。

  • 黄瀬戸…宝珠
  • 織部…弾き、洲浜、宝珠、兜、分銅など
  • 志野…宝珠、一文字、辻堂など
  • 伊賀…伽藍
  • 唐津…一葉
  • 野々村仁清…ブリブリ、結び熨斗、羽子板、犬、鴛鴦、鶴、鴨、鶏、傘、瓢箪、瓜、笛、琴、筍など
  • 尾形乾山…鑓梅、寿郎、菊の絵、月の絵など
  • 奥川潁川…呉須赤絵麒麟絵四方
  • 青木木米…染付一輪梅、御本紅葉
  • 永楽保全…交趾(鴨、亀、柘榴)、金襴手、祥瑞、青磁などの写し

唐物漆器香合の種類

唐物漆器香合の種類には以下のようなものがあります。

  • 堆朱…漆を塗り上げて厚みを作り、文様を彫ったもの。漆の色は朱、黄、緑、紫、黒があり、単色のものに堆朱、堆黄、堆黒、朱と緑を組み合わせたものに紅花緑葉がある。山水、人物、花鳥などの模様があり、倶利模様のものは倶利香合と呼ばれる。一文字形が多い。
  • 青貝…地塗りの上に青貝で文様を象嵌したもの。身蓋の内側が朱色になっている内朱や稜の部分に針金がはめこまれているものがよいとされる。一文字形が多い。
  • 存星…図柄を色漆で線彫りし、色漆をぬりわけたもの。一文字形が多い。
  • 独楽…同心円に色を塗り分けたもの。藤の実形、宝珠形が多い。
  • 天河…マカオから輸入されたもので、マカオがなまってこの名がついた。漆皮のものが多い。
  • 蒟醤(金馬)…タイ・ミャンマー周辺の漆器。文様を線彫りしてそのくぼみに色漆を象嵌する技法が用いられている。

和物漆器香合の種類

和物漆器香合の種類には以下のようなものがあります。

  • 錫縁…蒔絵の手箱の中におさめられていたものを取り出して転用したもの。鏡を入れた円形の器(鏡栖、鏡巣、鏡箱)も香合として使われる。
  • 鎌倉彫…中国の堆朱を模倣して作られ、直接木彫りで模様を出し、漆を塗ったもの。時代を経たものは古びた味わいがある。

香合の買取査定のポイントは

保存状態

香合は汚れ・欠け・ヒビ割れなどがない方が評価額は高くなります。

査定に出す前にきれいにしておいた方がいいと思われるかもしれませんが、自分でお手入れをしようとして傷をつける可能性もあります。

お手入れの方法がわからないものは、無理に掃除する必要はありません。そのまま査定してもらいましょう。

作家・時代

作者や作られた窯がわかれば、高い買取価格が期待できます。
一般的には、時代が古い方が評価は高くなります。

付属品

香合などの茶道具は、共箱や添え状などが一緒に残っていると査定額がアップします。
歴代の家元だけでなく、有力な茶人の箱書があると、さらにプラスになります。

リサイクルショップや質屋では香合の価値を見極めるのは難しいので、しっかりとした鑑定眼を持ち、相場のわかる古美術商や骨董のプロに買取を依頼するのが大切です。

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